白髪の少年と護衛役の少女が謎の大災害に見舞われ荒廃した日本を旅するSF超大作漫画が今回ご紹介する『天国大魔鏡』。
日本各地で出会う様々なバックボーンを持つ人々との交流や、外界から閉ざされ謎に満ちた施設の仄暗い真実。
運命が交差し明らかになる過去、現在、未来。
少年少女のロードムービー的な側面を持つSF漫画ですが、徐々に明らかになる驚愕の真実はミステリー作品が好きな人にもオススメしたい漫画です。
- ポスト・アポカリプス系漫画が好きな人
- SF作品が好きな人
- ミステリー作品が好きな人
- 巧みな伏線回収が好きな人
【天国大魔境】ネタバレありでレビュー!伏線回収が心地良い漫画です
作者 | 石黒正数 |
出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊アフタヌーン |
連載期間 | 2018年1月25日〜 |
単行本巻数 | 既刊11巻(記事執筆時点) |
【天国大魔境】感想・レビュー
以降より核心に迫るネタバレを含みますので、事前情報なしでこれから読みたい方は注意です。
巧みな構成力に読者はミスリードされる
まず物語の見せ方が非常に巧みだなと感心しました。
荒廃した日本を生きる人々の生活と謎の施設内で生きる見た目は人間だが特殊な能力をもつ少年少女たちの生活とを交互に描写しながら進む物語。
普通に読み進めていると、登場人物それぞれが織り成す群像劇かと思いますが、実はその時点で構成の策にハマっています。
謎の施設は外界から完全に閉ざされた空間なので、中からも外の様子は伺えませんし、外からも中の状況は分かりません。
つまり読者は、二つの世界を交互に見せられることによって、
「災害後に生き延びた人々が暮らす荒廃した外界と、災害から免れた安全圏な施設での暮らし」
を同じ時間軸で進んでいる別世界の物語として印象付けられます。
実はこれがミスリードで、結論から言うと、
- 災害を経て荒廃した復興中の外界→未来
- 謎の研究施設での生活の様子→過去
なのです。
実は災害の原因は謎の施設での研究が発端で、施設内の物語は外の世界の大災害、つまり主人公たちの物語のゼロ地点へ進むのに対し、主人公たちの旅の目的の一つでもあるマルの出自の解明は過去軸の施設内の世界へとつながっていきます。
つまり天国大魔境という漫画は、
起点が違う二つの時間軸が互いに行き来しながら一つの真実に集約していく過程を描いているSF漫画
という時間軸をテーマにした漫画です。
伏線の回収方法がめっちゃ心地良い
前述の通り、この漫画は未来と過去を行ったり来たりしながら進む物語です。
ということは、過去描かれている人物が未来の時間軸ですでに登場していたりするのですが、その描き方が非常に巧く、作中で厳格に「この人はあの人」だと名言されていないにも関わらず、後々振り返ってみると「あれ?これってあの人なんじゃない…?」という具合に、読者が目をこらすことでやっと見える絶妙な共通項がふんだんに散りばめられており、その鮮やかな伏線の回収方法がとても気持ちの良い時間モノの作品です。
厳密にはタイムリープものではないですが、時間軸を絶妙な匙加減で描いて騙される心地よさが好きなひとにはめっちゃオススメしたい漫画です。
【天国大魔境】ネタバレありでレビュー!伏線回収が心地良い漫画です、の〆
こんな感じで天国大魔境をご紹介させていただきました。
いや本当に、ここまでミスリードで気持ちよくなった作品は個人的に久々だったので、その鮮やかな伏線回収には感動すら覚えましたね。
ミステリー作品としても秀逸なので、気になった方はぜひ読んでみてください。