人間の闇とは得てして人の好奇心を惹きつけるものであります。
- 何かが起きそうなヒリついた空気感が好きな人
- 人間の闇を覗くのが好きな人
【住みにごり】怖い漫画見つけた…。ネタバレ&あらすじ有りでレビュー!
作者 | たかたけし |
出版社 | 小学館 |
実家には怪物が暮らしていた。兄貴という名の──
29歳、夏。会社から長めの休みをもらった僕は、久しぶりに実家に帰省した。住んでいたのは父母、そして35歳、無業無言の兄だった。この家族は怪物なのか?それとも家族とは怪物なのか?新ホームドラマ、襲来。
人生にいくつかあるイベント。
例えば進学、恋愛、就職、結婚。
人によっては「当たり前で普通のこと」と捉えがちなそれらのイベントは、言うまでもなく人によってはとてつもなく高いハードルが目の前にあったりして、他人の何倍も努力を要したり、何らかの不可抗力によって努力でカバーできない問題であったりすることは想像に難しくないと思います。
人は得てして自分にとっての当たり前を他人に強要してしまう生き物であり、主人公も例外ではなく、引きこもりで奇行気味の実兄に対してやり場のない憤りを感じながらも、適度な距離を保ちつつ家族としての関係性を辛うじて維持しながら日常を過ごしている。
しかし、実の親に直接「うんこ製造機」と呼ばれても意に介さず引きこもり生活を続ける兄を持てば、一般的に思い浮かべられそうな、社会通念的な「普通」を押し付けなくなる気持ちは分からなくもない。
自分の親族に同じ人間がいたらと思うと、果たして自分は何を思い、どんな行動に出るのかを考えるキッカケになった漫画です。
怖いのは兄だけではない
主人公家族を読者のメタ視点から観察してみると、兄以外の父、母、姉、のそれぞれの親族に対しても違和感を感じざるを得ない。
父の自尊心からくる嘘やハードな鬱憤の晴らし方、常に笑顔だが時折見せる母の行き過ぎた攻撃性も目を見張るものがあるが、個人的に、何より違和感を覚えるのは姉に対してだ。
読者の目には、あの家族の中では主人公と姉が一見まともに映るだろうが、家族のあらゆる奇行や異常性を逃げもせず受け入れて肯定する姉の姿勢は到底理解できるものではなく、もし自分がその立場にいたとしたら間違いなく見限るであろう状況においてもひょうひょうとやりすごしている様は、むしろ他の誰よりも危険な何かを懐に隠し持っているような狂気性を感じて仕方がない。
この漫画は形容し難いハイブリッドカテゴリーだ
この記事は便宜上、カテゴリーを日常に設定はしたが、本音を言えばこの漫画はホラー作品なのではないかと思っている。
作品全体に終始漂う「何かとんでもないことが起きてしまう」予兆めいた不穏な空気感は、ただのホームドラマカテゴリーに納めるにはあまりにも恐怖演出が過ぎるほどに、読み進めると否応なしに心拍数の加速を自覚し、ページをめくることに対して不安が付きまとうのである。
次のページでは誰かが血まみれになっている描写を想起させてしまう冷ややかな緊張感が常に張り詰めている。
この感覚をホラーと呼ばずして何と形容すればよいだろうか。
【住みにごり】怖い漫画見つけた…。ネタバレ&あらすじ有りでレビュー!の〆
ということで今回はすみにごりの感想を書いてみた。
個人的にはこういった重めの作品は好物だが、もしかしたら苦手な人もいるかもしれない。
だが、人間のダークサイドを垣間見るのが好きな私のような人間ならば、きっと満足いただける漫画であることは間違いないだろう。
解放されることのない鬱屈した人間の闇を覗く勇気はありますか?